寒い日が続いていましたが、思いがけない小春日和のある日、サルスベリの実と、枝先に残った綺麗な紅葉を見つけました。根締めにモミジバフウの葉を入れ、やっと色づいた庭のセンリョウの実をアクセントに入れました。
サルスベリは木肌がスベスベした感触で、猿も滑って登れないと言うのが名前の由来のようです。また百日間、花を咲かせると言う事で百日紅(ヒャクジツコウ)とも呼ばれています。実際には、一度咲いた枝先から再度芽が出て次々に花を付けるため、咲き続けているように見えます。
百日紅には、悲しい恋物語が朝鮮半島に残されています。
旅の王子が龍神を退治して生贄にされた娘を助け、二人は百日後に再会する約束をします。娘は約束の日を目前にして黄泉の国に召されてしまいます。そして娘のお墓からひとりでに生えてきた木が、紅色の花をたわわに咲かせました。それを悲しんだ村人が娘にちなんで花の名前を百日紅と名付けました。
花物語は、何故いつも悲しいお話ばかりなのでしょうか。悲しみは何時までも人の心に残り、癒えることの無い負のレガシーを語り継いでいくからでしょうか。そして語り継いでいって貰うことこそが、花物語の本質なのかもしれませんね。
また、地方によっては、クスグリノキ、ワライギ、コチョコチョノキなどいろいろ面白い名前もあるようです。幹を手で掻くと木がくすぐったがって、風も無いのに枝葉が動くと言うのです。中国の故事に由来するらしいですが、春に新芽が出た頃に試してみましょうか。
器は信楽焼で小川樂山と銘があります。歴史の表舞台から忽然と姿を消した幻の名工と云われていますが、ゴツゴツした肌触りや作為のない歪み加減に、無欲の境地で作陶に向かい合った孤高の人生を垣間見ることができます。
きっとしたであろう放浪の先に、彼が見たものは何だったのでしょうか。
いちゆう