士峰流 いちゆうの花

士峰流 森いちゆう による華道ブログ
Ichiyu's Flower Arrangements
ヤマブキ
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    ヤマブキの枝にワイルドストロベリーの葉を一枚、添えました。



    今、野山では、かぼそげな花が若草色の葉に混じリあい、細い枝に重なりあって咲いています。春の風が山吹色の波のように枝を揺らし、過ぎ行く短い春を惜しんでいるかのようです。

    そして、ヤマブキといえば、どうしてもこの有名な歌を思い出します。

    “七重八重 花は咲けども 山吹の 実のひとつだに なきぞ悲しき”

    太田道灌が、旅の途中で突然のにわか雨にあい、蓑(みの)を借りようと立ち寄った田舎家で、若い娘がヤマブキの一枝を差し出した話は、この歌とともに、とても有名です。
    実に蓑をかけ、山吹に山葺き(茅葺の粗末な家)をかけて、貧しい暮らしのなかで、貸すべき蓑すら無いことを憂いている歌です。
    何も言わずに黙って、ヤマブキの一枝を、古歌に重ねて差し出す高度な感性には、現代の私たちが持ち合わせていない、大和民族の究極の美学を感じます。

    そして、ヤマブキは本当に結実しないのか、という疑問にも突き当たります。
    じつは、一重のヤマブキは結実しますが、八重のそれは結実しないので、地下茎や株分けによって増えていきます。
    この歌は、八重のヤマブキを詠んだと考えられます。
    また、一重のヤマブキの実は小さくて目立たないので、この歌の影響もあり、一般に実ができないと誤解されることも少なくありません。

    ひとつの植物にも、このような深い物語や、不思議があり、興味はつきません。

    器(白川義和作)は、鏡餅のような胴に、直径1センチの首が少し立ち上がっています。下方の、岩場にくっ付いた貝殻の跡のように残る砂色の紋様が、自然な味わいとなっています。

    いちゆう
    | いちゆう | - | 19:28 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    チョウジガマズミ
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      小さな花が集まって咲いているチョウジガマズミですが、ひとつひとつの花はとても小さく目立たないので、小振りな作品にして花にフォーカスを当てました。



      チョウジガマズミのチョウジという名前の由来は、蕾の形がチョウジに似ているからだそうです。
      チョウジ(丁子、丁字)とは、フトモモ科の植物で、蕾が釘の形に似ていることから、中国語で釘を意味する丁の字が当てられたようです。

      蕾が少しづつ開くにつれて、さくら色に変化していきます。
      紅赤色の長い花筒の先に咲いている、さくら色の優しい花びらは、気品ある芳香を放ち、幼い女の子のあどけない仕草のように可憐で愛らしく、心を和ませてくれます。

      器は備前焼きで、灰皿として造られたものです。
      お花を活けてみると、予想どおり花とよく調和しています。
      それぞれの感性で、思いがけない物を花器に変身させるのも、また楽しいものです。

      いちゆう
      | いちゆう | - | 07:37 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
      ミツマタ
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        ミツマタ、クリスマスローズとアイビーを活けました。



        ミツマタは全て枝が三又で、名前の語源にもなっています。
        また、花は垂れさがって咲きますので、花の向きにも気を配ります。
        枝を三又のまま活けると形が平面的になってしまいますので、心ならずも一枝切らざるを得ませんでした。

        花には微かな芳香があり、たくさん咲いているこの木のそばを通ると、優しい春の香りに包まれます。

        ミツマタは和紙や紙幣の原料となっているのは周知のとおりですが、“三枝(さえぐさ)”という苗字の語源になっているという事はあまり知られていません。
        また、明治時代には担保価値があり、お金を借りる際に担保として、法務局に登記ができたそうです。

        今では、花を観賞するために、公園や庭などに植えられ、よくみかけるようになりました。

        クリスマスローズには白、淡緑、濃紅、薄紅など沢山の色彩があります。
        花弁のように見えるのは萼で、本当の花弁は小さく芯の周りに群がっています。
        水揚げのあまり良くないのが難点ですが、意外に人気のある花材です。

        器は前回シモクレンを活けた花器の上部の破片です。
        白川さんが上手に細工をして素敵な吊り花活けに変身させてくださったので、小さなお皿に剣山を入れて中央に載せました。
        普通なら当然捨てられるはずの破片が、こんなにも素敵な花器に生まれ変わるなんて、ほんとうに感激です。

        いちゆう
        | いちゆう | - | 19:37 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
        シモクレン
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          シモクレン(紫木蓮)の花のまだ硬いつぼみを頂いてきてから、4日目にようやく咲き始めました。



          ハクモクレン(白木蓮)よりも10日ほど遅れて咲くシモクレンは、まだ風のつめたい早春の梢で、すこし身を縮めながら陽光をもとめて咲いているかのようです。
          外側が紅紫色で、内側がほんのり桜色をした花弁は、ハクモクレンのような“はかなさ”はなく、むしろ落ち着いたおとなの女性の趣を感じます。
          シモクレンやハクモクレン、こぶし、などの仲間はマグノリアとよばれています。
          マグノリアの仲間は今から1億年以上も前から、すでに今日のような姿であったといわれ、地球上最古の花木のひとつであることが、化石によって判明したそうです。
          虫媒花であるマグノリアが最古の花木であるなら、それを媒介する昆虫もまたその時代からいたということですね。
          私たちの想像を超える、命をつなぐ長い長い時の流れの営みを考えると、ほんとうに自然の大切さをあらためて感じさせられます。

          白川義和さんの窯にお邪魔した時、棚の隅に置いてあるこの作品が目にとまりました。
          丁度よい具合に真ん中から割れていましたので、剣山を入れて水盤に見立てました。
          左側に蝶々のような模様が可愛いらしく残っています。

          いちゆう
          | いちゆう | - | 14:22 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
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