われもこうを主にして、珊瑚樹の実とサルトリイバラ、それにヤツデの葉をあしらいました。
フランス語の大学教授のようなイケメンの花屋さんが、暑い中、わざわざ山に取りに行ってくださった貴重な花材です。
暗い紅紫色のわれもこうは、赤と言うには程遠いのですが、”われもまた、くれない”(吾亦紅)と書きます。
“吾もまた紅なりとひそやかに”と言う句があるように、”わたしも紅なんです”、と周りに控えめに主張する風情が日本人の繊細な感性に響き合い、多くの人に好まれている花材です。
珊瑚樹は、果実が赤く熟すと赤い珊瑚玉に似ていることから、名付けられたようです。
秋には、葉も、ところどころ鮮やかな赤い色に紅葉して、根締めとしても面白く使えます。
サルトリイバラ(俗称、山帰来)は猿捕茨と書き、名前のとおり、トゲが沢山ついています。
もう少し季節が進めば赤い実がつき、主材として使うのに最適です。
花器(白川義和作)は、1250度ぐらいの高温で一週間ほどかけて焼締められています。
器自体が適度に呼吸し、水も腐りにくく、夏場でも花が長持ちします。
細首の徳利型のこの花器は、根締めに使う花材がよく締まって見え、全体のバランスもとりやすく、少ない花材で大きく活けることができます。
またこの器の焼締めの濃い藍墨茶の色は、葉の緑の色をいっそう引き立ててくれます。
いちゆう